15) 栄養療法(サプリメント)について(連載第5/5回)

はじめに
日本は,諸外国に比べサプリメントの使用が少ない国ですが,近年やっと使用が増えてきました。しかし,内容についてはかなり勉強不足です。
こんな話があります。日本で,日本人家族とアメリカ人家族が食事をしたときのこと。話題が健康のことになりました。

日本のお父さん(45歳) 「最近,疲れるんですよ。体力もないし,風邪も引きやすい。」
アメリカの子ども(小学4年生) 「ビタミン不足ですよ。ビタミンB群,ビタミンCとビタミンEを中心に,総合ビタミンを取るとよいですよ。」
日本のお父さん 「--?--」
アメリカの子ども 「ボクも食品からすべての栄養を摂取することが不可能と知り,バランスよくサプリメントを取っています。とくに試験のときは総合ビタミンを多く取ります。すごく集中力がでます。また,運動クラブに入っているのでタンパク質もかなり取っています。」
日本のお父さん 「アメリカの子どもはみんな栄養素についてこんなに詳しいのですか?」
アメリカのお父さん 「アメリカは医療費が高く,保険も高いので,自分の体は自分で守ることを小さなころから教育されているのです。」
日本のお父さん 「ウーン,日本もこの先,医療費は上がる一方です。もう少し自分の健康は自分で考えるようにしなければいけないですね。サプリメントは取りやすいので勉強します。今日は本当によいお話を聞きました。ありがとうございました。」
アメリカの子ども 「日本人は,たくさんあるサプリメントのなかでどの商品を選択したらよいのかわからないんです。あくまでも健康はお金で買える時代です。ナチュラルなものを選んでください。自然商品は決して安くはありません。私は世界各国,父や母とまわりましたが,それぞれの国で違ったサプリメントが出ています。日本人とアメリカ人は根本的に歴史や気候,風土,遺伝子,食事などが違うので,必要なサプリメントが違って当たり前です。その国の事情に合ったものを選んでください。日本人にあったサプリメントもたくさんありますよ。」
日本のお父さん 「貴重なご意見,本当にありがとうございました。明日早速,ホリステイック協会認定生活習慣病予防指導士に聞きます。」

 私は食べ物ですべての栄養素が取れるとは思っておりません。しかし,体の健康を考えるとやはり基本は食品(「食」は「人」に「良」いと書きます)です。無論,人間も動物もです。ペットフードも数年の間に研究・改良が進み,よい商品が出ています。オーガニックや自然食品などと表示されていますが,なかなか完全なものはできません。なぜ? 原料となるものが年々汚染されているからです。私は運よく12年前から日本で製造している高純度のサプリメントに出会い,病気の予防や病気になった子たちに選択肢の一つとして使用しています。無論,人間用を動物に食べさせていますが,これからお話しさせていただくなかの,核酸については5年前に動物用を作成しました。

動物が必要とする8大栄養素について
 私が推奨している8大栄養素,タンパク質,糖質(炭水化物),脂質,ビタミン,ミネラル,食物繊維,核酸,酵素について,次に説明したいと思います。

〇タンパク質(プロテイン)
3大栄養素の一つで,エネルギー源になる一番大事な栄養素です。主な働きは,体のすべての組織(骨,歯,爪,髪,筋肉,内臓,血管,血液)をつくり,体を調整するホルモンをつくり,代謝を促す酵素をつくり,老化を防ぎ,抗体をつくります。犬猫が必要とするタンパク質は22種類のアミノ酸の組み合わせで構成されています。体のなかで合成できるアミノ酸とできないアミノ酸があります。体内合成ができないアミノ酸は必須アミノ酸といい,食物中から取り入れなければなりません。犬が必要とする必須アミノ酸は10種類(アルギニン,ヒスチジン,イソロイシン,ロイシン,リジン,メチオニン,フェニルアラニン,スレオニン,トリプトファン,バリン),猫は11種類(犬の10種類にタウリンをプラス)です。
サプリメントとして多くのプロテインが製品化されています。主な原料は大豆,卵などですが,アレルギー疾患や肝疾患,腎疾患のある場合,医師から処方を受けるようにしてください。表示もよく読んでください。とくに,タンパク質利用効率(PER)とプロテインスコアは,要チェックです。
タンパク質利用効率(PER):食品や栄養補助食品に含まれるタンパク質の消化吸収,および体内で利用される効率。最大数値(4.0)に近い商品がよいとされます。表記製品は少ないのですが,ハイスコアのものはラベルに書いてあります。
プロテインスコア:タンパク質を構成するアミノ酸の構成比率,すなわちバランスを表す指標です。最高値は100で,スコアが高いほど体内で役立ちます。90以上のもの選んでください。

○脂質(リピッド)
脂質は大きく分けて脂肪(ファット)と,類脂質(リポイド)に分けられます。代謝によって炭水化物やタンパク質の2倍のカロリーを供給します。細胞膜,角膜などの構成成分,血液成分,貯蔵脂肪となり,細胞膜や血管を強化,血圧をコントロールし,中性脂肪,血中コレステロールを減らします。飽和脂肪酸は常温で固形のチーズやバターなどに,不飽和脂肪酸は常温で液体のサラダオイルや魚の脂,月見草などに含まれています。不飽和脂肪酸には,オメガ3系(n−3)のEPA,DHA,α-リノレン酸と,オメガ6系(n−6)のリノール酸,γ-リノレン酸,アラキドン酸とがあります。ただし,私は体のバランスのため,両方の不飽和脂肪酸がバランスよく入っているものをお勧めしています。また,不飽和脂肪酸は酸化しやすいので必ずビタミンEが入っているものを,また,輸入品のなかで回転が早いものは輸送中の温度で酸化しやすいので購入時に吟味し,どんな原料か表示と内容をよく確認してから購入してください。

〇ビタミン
ビタミンは,脂溶性,水溶性に分けられます。天然ビタミンは,自然界の有機物,しかも生きているものにしか含まれていません。現在,栄養素としての働きを有するビタミンは約20種類,発見されています。ビタミンは体内でほとんどつくられませんので,食品で取らなくてはいけません。ところで,AAFCO(アメリカ飼料検査官協会)は,犬猫はビタミンCを自分でつくることができるから必要ないといっていますが,ストレス動物が多い現代社会,かつてとは同じではありません。体内でつくることのできない子たちがたくさん見受けられます。犬猫にもぜひ,ビタミンCを与えてください。

〇ミネラル
体内で酵素とともに働くので助酵素とか補酵素とも呼ばれます。哺乳動物には18種類の無機物質が必要だといわれています。

〇食物繊維
かつては役に立たないと思われていましたが,いまや栄養素としてとても重要視されています。食物繊維にはさまざまな種類があり,それぞれ異なる性質をもっています。水分を吸収する水溶性食物繊維と,吸収しない不溶性食物繊維があります。食物に多く含まれているのは,セルロースやヘミセルロース,リグニン,ペクチン,ガム,ムチン質(ムシリージ)で,糖尿病や高血圧,心疾患,肥満に効能があります。

〇核酸
動物が生きていく上では6大栄養素が必要ですが,体の遺伝子レベルでの予防に核酸がどうしても必要となります。核酸という名は,酸性を示すことからついています。DNA(デオキシリボ核酸)とRNA(リボ核酸)の2種類からなり,遺伝子の本体にほかなりません。日常の?食べる”行為から簡単に摂取できますが,好品質の核酸はやはりサプリメントで取るのが一番です。肝臓でつくる核酸はデノボ合成でつくられます。このデノボ合成の核酸は癌の栄養になりますが,サルベージ合成でつくられる核酸は栄養にはなりません。食品からとる核酸はサルベージ合成でつくられるので,癌の成長を抑制するのには食品からの核酸を多くとればよいのです。核酸が癌を防ぐ作用としては,次のようなものが知られています。?抗酸化作用を発揮して,活性酸素などによる遺伝子の損傷を未然に防ぐ。?癌抑制遺伝子P53を活性化させ,遺伝子の修復に当たらせる。?P53を活性化させ,異常細胞(癌細胞)をアポトーシスに追い込む。?免疫力を高め,癌細胞を駆除する。?核酸成分のサイクリックAMPがラップ1タンパク質を増やし,癌細胞を駆除する。そのほか,さまざまな効能が知られていますが,とくにインターフェロン-γやインターロイキン2の産生を増やす一方,インターロイキン4の産生を減らすことは有名です。1型ヘルパーT細胞系を優位にして,マクロファージの活性を高めるため,細胞性免疫が高まり,癌細胞の排除に役立っています。また,2型ヘルパー細胞系が相対的に落ちるため,アレルギーの改善にも役立ちます。
この核酸サプリメントは,新鮮なサケの白子から水分,水溶成分,脂質を除去して乾燥させたサケ白子エキス(高分子DNAを30〜40%,プロタミンを50〜60%含有。ヌクレオプロテイン,DNA核タンパク末とも呼ばれる)と,ビール酵母エキス(RNA含有量を50%以上に精製濃縮〈ビール酵母に含まれる高分子RNA5%〉にペプチド,ビタミン,ミネラルを含む)があります。私は動物用核酸栄養補助食品として5年前に開発したヌクレオエンジェル・エンジェルセブンを,癌を始め,自己免疫性疾患,アレルギー,代謝性疾患,繁殖障害,皮膚疾患,眼疾患,骨疾患,神経・脳障害,ボケに使用し,60%以上のリピート率を得ています。

〇酵素
酵素は生命を支える物質で,「生命のスパークプラグ」と呼ばれています。消化酵素(アミラーゼ,リパーゼ,プロテアーゼ),食品酵素(ナマのものがよく,48℃以上で壊れます),代謝酵素(SOD,カタラーゼ)などの種類があります。日本で売り出されている酵素には他の栄養素も多く入っていますが,アメリカでは2000種類以上の酵素が売り出されています。すべての栄養素の消化・吸収は酵素がないと行われません。

まとめ
日本でもやっと,サプリメントを勧める先生が増えてきました。獣医師も飼い主の要望を知らないといけないと思っています。ただし,栄養素の基本はあくまでも8大栄養素で,すべてバランスです。新しい学問は,今日の真実は明日の誤りということが多々あります。この分野も同様です。不正確な情報に惑わされず,キチンとした情報を得て,動物たちに与えるようにしてください。