14) 栄養療法におけるHEC血液細胞分析(L.B.A.検査)(連載第4/5回)

はじめに
当院では10年前より,病気の予防・病気治療のために,犬猫に対し核酸を中心とした栄養療法を用いている。しかしながら,この療法は身体に負担が少ない分,効果発現もゆっくりしているため,即効性を期待する飼い主には十分理解されにくいというデメリットがあった。そこで,ヒト医学ではすでに用いられているLIVE BLOOD ANALYSIS(L.B.A)(図1)をHEC(Health Education Co-operation)よりトレーニングを受け,飼い主に「生きた血液」を見せ,従来の血液検査データでは理解しにくい部分を納得してもらい,栄養療法に対する意識を高めているので,ここに紹介する。

L.B.A検査所見
臨床所見,一般身体検査,CBC,血清生化学検査,尿検査で正常値を示す血液は,赤血球の大きさが均一で,個々に離れて,さらさらと流れて見える。また,白血球の動きも活発である(図2)。栄養過剰,タンパク質や脂肪の分解能が低下しているもの,たとえば脂漏性皮膚炎や肥満の場合,赤血球は連鎖形成,連結,凝縮がみられる(図3)。貧血を呈するものでは,大小不同や標的細胞(ターゲットセル)がみられる(図4)。肝・腎機能低下の際はアカントサイトが障害の程度によってみられた(図5)。ストレスの多くがかかっているもの,添加物の多い餌を食べているものの赤血球の辺縁はフリーラジカルによるダメージ像を呈し,不正になっていた。また,免疫力低下が疑えるものでは,白血球やマクロファージの運動が鈍いことも観察できた(図6)。さらに,免疫力低下が疑われるものでは血球以外にもフィブリノーゲンや脂肪滴,コレステロール様結晶,タール,食品添加物と思われるもの,ソマチッドもみられた(図7,8)。

まとめと考察
L.B.A.検査で「生きたままの血液」を飼い主とともに観察することにより,血球の活動状態,活性酸素による影響,貧血,肝・腎機能の低下などをわかりやすく説明できるようになった。また,免疫力の程度や生活習慣病の危険性・栄養状態が瞬時にわかり,治療方針の決定の大きな指針となることも判明した。また,写真として記録できるため,治療の経過を追うことができ,治療後の対策を講じる際の指針となるという利点がある。
今後は,栄養療法に対する飼い主の意識向上をさらにはかり,ガストン・ネサン博士の発見したソマチッド(DNAの前駆物質と考えられる超極微少物質)の形態を観察したいと思う。ソマチッドを通して,体内環境の評価と免疫予備能がわかれば,予知予防ができ,病気になる動物も少なくなると思われるからである。

参考文献
1)沈黙の血栓:J.プリビテラ,中央アート出版社
2)治癒のスイッチが入るとき:東山明憲,明窓出版
3)完全なる治癒−ガストン・ネサンのソマチッド新生物学:バード著,上野圭一訳,徳間書店

表 L.B.A検査でチェックできる項目
○赤血球や白血球,血小板の活動状態
○ビタミン・ミネラルの欠乏,不足状態
○毒素や活性酸素による細胞への影響の有無
○体内酸化状態,貧血の有無
○脂肪・タンパク質の摂取過剰
○肝臓,腎臓,膵臓の機能低下
○組織への酸素供給度
○ストレスの影響の有無
○免疫力の判定

表 L.B.A検査の方法
@犬猫から採取した血液一滴をカバーグラスに採り,静かにスライドグラスをのせ,血液が自然に広がるようにする(未固定)
AこれをオリンパスBX51顕微鏡で明視野,暗視野の1000倍油浸にて観察(明・暗視野の切り替えはコンデンサ交換)
BCCDカメラで撮影した像を液晶モニターに写し出し,飼い主とともに観察,説明を加える
 ※観察は見やすいところを探し,一定の視野にて血液分析を行う
C特徴的な画像をビデオプリンタに取り込み,プリントアウトする
Dプリントアウトした画像をスキャナに取り込み,コンピュータに保存する