12) 免疫システムを高める最強キノコ,メシマコブ(連載第2/5回)

はじめに
ここ数年の間に,作用機序や有効性が明らかになった食品や機器,各種療法などを医療現場へ応用しようという動きが活発化し,代替医療という分野が構築されつつあります。自分の健康は自分で守り,病気を予防,治療しようという代替医療は,副作用の心配がなく,体にもともと備わっている免疫システムを十分に発揮させることに主眼を置いています。この免疫システムを高める最強のキノコ,メシマコブに注目し,動物に使用して約5年が経過したので,ここに紹介します。

メシマコブについて
メシマコブ<Phellinus lenteus(Berk'et Curt)-Aoshima>は,長崎県男女群島の女島(メシマ)に野生する桑の幹に寄生する,タバコウロコタケ科キコブタケ属の日本原産の薬用キノコです。このメシマコブの薬効に世界で初めて注目したのは,元国立がんセンター研究所の池川哲郎氏と東京大学の柴田承二氏の研究グループで,1968年,マウスに実験用の癌サルコーマ180を移植し,担子菌類や食用菌類の熱水抽出物,十数種類を腹部に注射,5週間後の癌の増殖阻止率をみるという実験を実施しました。その結果では,メシマコブは96.7%というキノコでは最も高い癌増殖阻止率を示しています。
また,1980年代には,西条中央病院(現東広島病院)の山名征三医師が,メシマコブ培養菌糸体の熱水抽出物を使って抗癌作用を確認し,エールリッヒ腹水癌および肝臓癌,胃癌,胆管癌,肺癌,結腸癌,直腸癌,子宮癌に対する効果測定の研究を行っています。その研究では,エールリッヒ腹水癌のマウスにおいて,メシマコブ培養菌糸体の熱水抽出とコントロール(生食水),カワラタケ(クレスチン)を比較。この研究でも,メシマコブがマウスの延命率,延命日数を著しく高めることが判明しています。
そのほか,ソウル大学薬学部のKim教授や忠南大学薬学部のJung教授,韓国生命工学研究所のYoo博士,慶煕大学のHong博士らによっても,メシマコブのさまざまな抗癌効果について研究がすすめられ,臨床試験も数多くなされています。
このようなすぐれた薬効が認められながら,メシマコブが一般に普及しなかったのはその栽培・培養が難しかったためですが,その抗腫瘍効果に注目した(株)韓国新薬と韓国科学技術省とのG7プロジェクトの約10年にわたる研究の結果,培養に成功。続いて,メシマコブに少量含まれる抗癌成分が有効量に達するまでに培養することにも成功しています。さらに,10のグループに分類されるメシマコブの菌株のなかから,最も強力で人体に無害な抗癌免疫増強効果を発揮する画期的な物質はメシマPL2,PL5であることもつかみ,1993年にはメシマコブ培養菌糸体の熱水抽出物から制癌免疫賦活剤「Mesima」を開発,一躍脚光を浴びました。韓国新薬は,この成果により,すぐれた工業製品に贈られる「韓国科学技術賞」を1997年に受賞,翌98年には韓国のノーベル賞といわれる「茶山賞」をも受賞。また,その開発にかかわった韓国生命工学研究所のYoo博士にも「茶山賞」の個人賞が授与されています。

メシマコブの作用機序
キノコの多糖体を用いた癌治療は,カワラタケ(クレスチン)やシイタケ(レンチナン)ですでに実用化されていますが,植物由来の抗癌性多糖体に共通しているのは癌細胞に対して直接的に細胞毒が働くのではなく,動物が本来もっている免疫システムを活性化させるということです。
メシマコブには多種類の多糖類,核酸,脂肪酸,アミノ酸,酵素などが含まれていますが,現在までにわかっているその作用機序は,マクロファージの活性を介してT細胞を活性化し,インターロイキンをはじめ,多数の免疫活性物質を放出するというものです。つまり,メシマコブの培養菌糸体抽出物は免疫機能を担うリンパ球のB細胞やT細胞,NK細胞などの働きを増強し,サイトカイン産出を高める働きがあります。その結果,免疫機能が高まり,抗癌作用を発揮するのです。そのため,癌に対する予防効果があるほか,化学療法による副作用を減少し,また,手術後に化学療法剤を併用することで抗癌効果が著しく増強するという利点もあります。いうまでもなく直接生体に使用しても毒性はまったくなく,長期間,継続してもその免疫機能は一定に保たれて低下することはありません。さらに,免疫機能そのものを活性化するので,癌だけでなく,外部より進入してきたウイルスなどの抗原を遮断し,さまざまな疾病を予防するという作用があります。

症例報告

1.口腔内黒色肉腫 
ヨークシャー・テリア,雌,12歳齢。
左下顎第1後臼歯の外側歯肉に小指頭大くらいの腫瘍を発見,6カ月後に来院。歯槽膿漏がひどく,食餌は柔らかいものを飼い主が与えると少しずつ食べるというような状態だった。体重は以前3kgだったが来院時は2kgで,元気はあるが腫瘍はうずらの卵大に拡大していた。検査にて,僧帽弁閉鎖不全があった。腫瘍の胸腔,腹腔への転移は不明。全身麻酔にて歯石除去,歯周病治療,抜歯手術を行い,腫瘍の組織検査を実施した。ただし,このときは腫瘍については非処置。検査結果は,悪性黒色肉腫。術後の状態は良好で,食欲もかなりあった。治療として,核酸とメシマコブを与える。口腔内腫瘍の大きさはあまり変わりないが,表面は破れ出血があった。最後まで食欲は落ちず,体重は1.95-1.85kgを維持。ほとんど普段と変わらない生活のまま,苦しまずに口腔内手術後4カ月目に旅立つ。

2.口腔内悪性線維肉腫

プードル,雄,97年1月生,体重8.5kg。
1歳ちょっとで上顎左前臼歯内側に0.5×0.5cm弱の腫瘍ができる。線維肉腫という診断で,他院にて腫瘍を切除し,数回の放射線治療を受けるが舌,口唇は焼けただれ変形し,食餌が食べられない状態になる。数カ月後,焼けただれたところの傷も回復するが,舌と口の変形は残る。その後,2回目の放射線治療を薦められた際,前回治療のつらい日々を思い出した飼い主は代替療法を望み,98年11月,当院に来院する。飼い主との話し合いで制癌剤,放射線治療は犬の負担になるため実施せず,副作用のない核酸,メシマコブによる療法を実施する。その結果,現在まで再発をみることなく,元気に生活している。

3.移行上皮癌(膀胱)

雑種犬,雄,14歳齢,体重15-17kg。
血尿が続くので,98年9月,近くの動物病院に受診。膀胱の移行上皮癌という診断で,手術を受ける。その後,制癌剤投与を薦められるが拒否し,99年1月に再発。余命2〜3ヵ月といわれ,当院に相談があり,核酸,メシマコブの投与開始。再発後1年10カ月も生き延び,2000年11月に死亡する。この症例は1000km以上離れたところにいたため直接診察ができなかったが,飼い主の稟告を元に核酸,メシマコブの使用をアドバイスしたものである。

さいごに
現在,癌治療の現場で免疫システムを増強させる試みが注目されているなか,その効果の大きなメシマコブについて紹介しました。韓国では医薬品であるメシマコブですが,日本では健康食品であり,その点,非常に使用しやすいと思います。私はメシマコブにいち早く出会うことができ,5年近く使用し,癌や肉腫をはじめ,自己免疫性疾患,泌尿器生殖器疾患,皮膚病の治療に適応しています。さまざまな情報があふれる現在,効果のはっきりしない商品も多いですが,メシマコブの免疫増強効果は最強,南米のお茶よりも数段上で,多くの臨床医が使用しています。私は,治療以外でも,癌の予防用に飼い主さんに薦めています。獣医師は選択を間違わないで,飼い主の気持ちを最後まで大事に考え,一緒に病気に立ち向かわないといけないと思います。私は飼い主にメシマコブを薦めるとき,かわいい子たちに「心」で飲ませるようにと,いつも言っています。

* 2001年の日本補完代替医療学会が11月10,11日,大阪国際交流センターで開催されます。

** メシマコブを商品化した「メシマピュア」は(株)エルアンドエルから発売されています。問合せ電話番号は03-3405-2869です。

表 担子菌類熱抽出物のサルコーマ180に対する抗腫瘍効果

和名 腫瘍阻止率(%)

コフキサルノコシカケ 64.9

カワラタケ 77.5

アテゲカワラタケ 65.0

オオチリメンタケ 49.2

カイガラタケ 23.9

チャカイガラタケ 70.2

ベッコウタケ 44.2

オオシロタケ 44.8

ウスバシハイタケ 45.5

メシマコブ 96.7

シイタケ 80.7

エノキタケ 81.1

ヒラタケ 75.3

カンタケ 72.3

ナメコ 86.5

マツタケ 91.8

キクラゲ 42.6

(国立がんセンターの試験結果より)