10) 栄養療法におけるLive Blood Analysis(L.B.A)検査の医猫への試み

(2000年10月29日 日本小動物獣医学会 発表演題)

はじめ
我々は、犬猫の栄養療法(核酸・ビタミン・ミネラル・不飽和脂肪酸・食物繊維・その他)の必要性を飼主に説いてきたが、今回、L.B.A.を用いた血液栄養分析によって、その場でわかるバイタルチェックを行い、従来の血液検査データの数値だけでは理解できない部分を、飼主に“生きた血液”を見せることで納得させ、治療に対する意識を高めるために、犬猫にもLB.A.を応用することを試みた。

方法
犬猫から採血した一滴をカバーグラスに落とし、そのまま(未固定、未染色)スライドグラスに、血液が2枚の間で薄く自然に広がるようにのせる。これをオリンパスBX50顕微鏡の超暗視野;1000倍油浸で観察、飼主にモニターテレビを通して見てもらい、必要に応じてプリントアウトしておく。

結果
臨床所見、一般身体検査 CBC、血清生化学検査、尿検査で正常値をしめすものの赤血球は大きさが均一で、個々に離れており、さらさらと流れて見える。一方、栄養過剰、蛋白質または脂肪の分解能の低下しているもの、脂漏性皮膚炎、肥満のものの赤血球は連銭形成、凝集の傾向にある。貧血を呈するものでは、標的赤血球が見られ(犬>猫)、肝機能、腎機能の低下の際は、アカントサイトが障害の程度により様ざまに見られた。ストレスの多くかかっているものや添加物の多い食餌を食べているものの赤血球の辺縁は、フリーラジカルによるダメージ像を呈し不正になっていた。免疫力の低下が伺えるものでは、白血球やマクロファージの運動も鈍いことがわかった。血球以外にもフィブリノーゲン、脂肪滴、コレステロール様結晶が見られることがあった。

考察
LBA検査は、飼主とその場で血液を見ることで、血球の活動状態、活性酸素による影響、貧血、栄養過剰、肝・腎機能の低下等の説明ができる。また、写真にとっておけるため、治療の経過の比較ができ、その後の対策も講じられるという利点があり、動物への応用も可能である。さらに今後は、ガストン・ネサン博士の発見した極微な有機体ソマチッド(彼はDNAの前駆物質と考えている)の形態を観察できれば体内の環境と免疫予備能の把握ができ、病気の前兆の発見と予防といったことも可能になると思われる。