小動物臨床Vol.16 No.2
(1997.3)より転載 花田 道子、宮野のり子
はじめに
最近犬猫に見られる疾患は原因が多様で難治性のものが多く、いずれも遺伝子の損傷が原因であることが判明してきています そこで、私は20世紀に急速に発展した薬とメスの医療から、生き物の遺伝子を知り、守る、核酸療法を犬猫に考え6年前から栄養療法を行なってきた。以前は人間用の商品を使用していたが、今回、犬猫用にヌクレオエンジェルを改良したものを18名の先生に使用して頂いたのでここに報告します
1.材料および方法
1)材料 動物用健康補助食品であるヌクレオエンジェル[総発売元(有)オン]で成分は表1に示したものである
表1 成分内容量 (3粒中)
サケの白子 |
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酵母エキス |
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その他の栄養成分 | |
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各疾患別の有効性、無効性を一覧にまとめたものがあるがここでは煩雑になるので掲載しないが有効率は約60%であった。(別刷がありますのでご入用の方はご遠慮なく 動物核酸栄養学研究所 03−3405−2869、FAX 03−3403−7162までご連絡下さい。) 特に効果のあった症例を以下に示します。
T群(ガン)
No.1 トイ・プードル、7歳、オス
1996年10月、左前肢第2指の肉球部腫脹で来院、悪性メラノーマと診断 肘関節よりの断脚術を実施。その後浅鼠径リンパ節肥大が認められたため、1ヶ月に1回定期検診に通院リンパ節はかなり大きくなっているが、1日10粒継続投与しています
<効果、先生の印象>
現在まで元気、通常の生活には支障が無いが、腫脹部の疼痛が続いていることと、浅鼠径リンパのい開部が多発しているのが問題で、核酸の効果は肺への転移も認められず、リンパの免疫能と併せて転移の発生を抑えている可能性があると思われます
No.2 柴犬、5歳、5.5kg
1996年9月、なんとなく元気が無く獣医科病院に連れて行く。先生に内股にMASSがあることを言われて初めて飼い主はわかった。全身状態もあまり良くなく、病院でいろいろ検査を受けるとひどい貧血があるためX線検査も行なうが肝臓がかなり大きく腹水も溜まっているといわれ、MASSのBIOPSYを受ける一般血液検査、生化学検査より血管肉腫といわれ、制がん剤を投与されたが、胸部に水が溜まって倒れるようになり、元気も無く、食欲も無くなった。先生には10種類も薬を飲むように指示され、体重も減り、困って4月に転院してきた
ヌクレオエンジェルを与えたところ、腹水がなくなり動きも良くなってきた投与量は1日30粒を与えた
<効果、先生の印象>
全身状態は悪くないしかし、食欲少し減る 2週間で胸水がほとんどなくなった。内股のMASSもそれまではかなりの勢いで大きくなっていたのが、大きさが変わらなくなった もっと驚いたのは、胸水が無くなってはっきりしたのだが、現在まで、この肺転移像は少しずつ小さくなっています 現在も1日30粒継続投与しています
No.3 キャバリア、8歳、オス
1996年9月、口腔内MASS(左側上唇内側面)のため来院。パンチによる病理検査にて悪性メラノーマと診断広範囲な顔面の摘出術になるため飼い主の希望によりMASS部はそのまま様子も見ていた 初診時の大きさは15mm×10mmで1ヶ月後5mm×5mmまで退縮したが、さらに1ヶ月後10mm×10mmなりいまもその大きさで維持されている 11月下旬より左側下顎リンパ節の腫大が見られ、現在も徐々に大きくなっているが、疼痛は見られない様子現在健康診断では異常も無く転移(肺)も認められないヌクレオエンジェル1日12粒継続投与している。
<効果、先生の印象>
臨床症状、MASSの退縮、胸部X線所見、核酸以外に特別な治療もしていないことから、核酸により現在まで維持できている様子です。
No.4 アメリカンショートヘア、14歳、メス
1996年6月来院、乳腺腫瘍。右側乳腺に2×3×4cmのMASSが触れる 飼い主は1.5ヶ月前に見つける 8月自潰し9月乳腺全摘手術を行なう 浅そ径リンパ節に転移がみられた。病理検査でAdenocartinomaと診断毎月診断核酸は1日10粒全身状態は良かったが4月20日死亡。
<効果、先生の印象>
1996年6月より核酸療法を開始したが、術後転移が見られたが、ここまで延命できるとは思わなかった転移は肺と腹腔内に見られた。死ぬ2日前まで元気に生活して食欲も落ちなかった
U群(FIP)
FIP抗体価が高かったり、同居猫がFIPに感染している猫に、平均1日12粒与えると延命できる事が分かった
V群(皮膚病)
皮膚疾患は、脱毛は必ず毛が増える事がわかった。脂漏性のもの、アレルギー又は慢性のものはかなり時間がかかり核酸だけでは反応しないものもあるが、追加としてビタミンE、オメガ3・6と必要ならミネラルを与えて食餌を考えれば、ほとんどの皮膚病はクリア出来ると思われる
W群(消化器)
核酸は腸の絨毛の代謝を助けるので、下痢の場合にかなり良い結果が見られる 但し、嘔吐がある時はあまり良くない生まれてすぐでも投与は大丈夫である
X群(高 齢)
高齢の犬、猫は人間同様に自ら核酸を作り出せないので、口からの投与が必要で、与えるとかなり若返る。
3.考 察
ヌクレオエンジェルが動物用栄養補助食品として改良されたが、商品自体は人用とほとんど同じで、グレードが高いものである。しかし、栄養補助食品は薬ではなく、機能性食品だという事が理解されにくく、また核酸が第7番目の準必須栄養素であることの理解が進んでいないため、結果を集計するのに時間がかかった。私が思うのは、先生方が核酸を上手に使用すれば、治療はNever Give Upになるということ、またどうしても理解できなければ、ご自分で人用核酸(健康補助食品で販売されています)を食べることをおすすめします。 当院はこれからも、21世紀に向けて、飼い主からニーズの高い核酸を中心とした栄養療法を行なっていくつもりである。
4.まとめ
ヌクレオエンジェルの犬、猫に対する臨床的評価を140例で行なった。治療のための投与量は小型で1日8〜12粒、健康維持には1日4粒投与する。投与量が少ないとほとんど効果はない。以下の成果を得た。
謝辞
今回ご協力頂きました先生方に心よりお礼申し上げます。